大阪府内、今年1000件超す    特殊な金属工具を使って玄関の錠を開ける「ピッキング」と呼ばれる手口の侵入盗が大阪府内で急増し、大阪府警が把握しただけで被害は今年8月末までに1000件を突破したことが27日、分かった。  既に昨年1年間の被害件数(83件)の約14倍に上っており、被害額は計2億円を突破している。ピッキングの技術を身に付けるのが比較的簡単なうえ、こじ開けたことが後から発見しにくいことも急増の背景にあるとみられ、府警は警戒を強めている。 府下のピッキング盗被害は今年3月ごろから急増。6、7月には月に200件を超す被害があり、8月末までの発生件数は1133件に上った。8月末までの被害額は現金だけで約2億4千万円に達しており、昨年1年間の7倍以上。キャッシュカードや貴金属も多数盗まれているため、被害総額はさらに膨れ上がるとみられる。  府警では「東京で犯行を重ねたグループが、取締りを避けて大阪に流れてきている可能性がある」と分析、一段と捜査に力を入れる構えだ。 ピッキングは、「ピック」を呼ばれる特殊な細い棒を鍵穴に差し込み、内部の小さな金属板を押し込むなどして、錠を開ける技術。標的になるのは、昼間は留守がちな単身者用マンション、夜間は警備システムを設置していない会社事務所などが多い。  狙われやすいのは、鍵穴が縦で錠にV字の溝がある「ディスクシリンダー型」と呼ばれるタイプ。多くのマンションやアパートで使われ、慣れれば数秒で開けられるという。大阪府警などが5月、ピッキングを全国で行なったとして逮捕した中国人窃盗団の1人は「数日練習するだけで、簡単にあくようになった」と話していたという。 犯行の痕跡が鍵穴の中にしか残らないため、犯人が逃走後も発見までに時間がかかり、初動捜査が遅れてしまうのも、被害拡大の原因の一つだ。発覚を遅らせるため、犯人が鍵穴に接着剤や木片を詰め込むケースもある。 犯人の急増に伴って、メーカーへの問い合わせも多くなっている。ある大手錠メーカーには、以前は住宅業界からの問い合わせがほとんどだったが、最近はマンションの住民から直接錠の種類や値段を聞いたり、被害に遭いにくい安全性の高いタイプを問い合わせてくるケースが増えている。 府警は「犯人は住民に目撃されないよう、開錠に時間のかかりそうな錠をさけている」と指摘している。鍵穴が横でW字の溝がある「ロータリーディスクシリンダー型」など、ピッキングに強い錠に付け替えたり、補助錠を付けるのが有効だが、マンションでは入居者が勝手に錠を替えられない事が多く、対策が進みにくい状況もあるという。 〔ホーム〕 〔戻る〕 -玄関先の工夫でピッキングを防げ- ― 日本経済新聞(夕刊) 2000年(平成12年)10月2日(月曜日) ― 補助錠シール・ダミーカメラ かぎ穴に専用の小道具を差し込んで開錠するピッキング侵入盗被害に対応した本物そっくりの防犯グッズが人気を呼んでいる。補助錠が付いているように見せる立体シールやダミー防犯カメラ、震動を感知して犬の鳴き声を出すセンサーなど。それぞれ昨年の数倍の売れ行きで、商店主から主婦層にも需要が広がっている。関係者は「ダミー商品でもある程度の効果があるが、補助的なもの。本格的な防犯対策が必要」と呼び掛けている。 神戸市の東急ハンズ三宮店の錠前コーナーには、本格的な補助錠などとともに本物そっくりの金属製の立体シールが並ぶ。かぎ穴なども精巧につくってあり、ドアに張り付ければ本物の補助錠とほとんど見分けがつかない。 同店では1個780円で昨年末から店頭に並べているが、ここ数ヶ月で売れ行きは3倍以上に増え、毎月数10個が売れる。「『近所で被害にあったと聞いたので』という主婦が買っていくケースが増えた」という。 販売を手掛ける日本ロックサービス(東京・板橋)は、今年1〜9月は約3万個を販売、納期に間に合わない状態が続いているという。同社は「この家は侵入しにくい、という視覚効果を期待している」と話す。 中身が空のダミー防犯カメラは3,900円から20,000円程度の複数の種類が販売されている。赤い発光ダイオード(LED)が点滅して作動中のようにみせかけるのが特徴。メーカーの1つグリプトン(大阪市)でも、今年に入り需要が数倍になった。同社は「本物だと3万〜4万するうえに、維持費も必要」と話し、ダミー商品の手軽さが背景にあると分析する。このほか震動を感知して犬の鳴き声を出すセンサーや、「防犯カメラ設置」と書かれたステッカーなどが窃盗犯を欺く商品として関心を呼んでいる。 ピッキング盗は耳かきのような特殊工具をかぎ穴に差し込んで侵入する窃盗事件。今年に入り都市部を中心に急増しており、東京や大阪ではすでに昨年の被害件数を上回った。「同じタイプのかぎを使うマンションで日中留守になる単身赴任用などが集中的に狙われる」(大阪府警生活安全部)という。 ピッキング犯は数分で開錠できない扉は避ける傾向にあるとされる。ダミーの商品の人気も、隣の部屋より狙われにくくなる効果を期待してのこととみられ、メーカーは「ピッキング被害に対する危機感の広がりの表れ」と口をそろえる。 ただ、「プロなら一見して偽者を見分ける」(府警)といい、あくまで補助的な効果にとどまるのが実情。警察や防犯協会はピッキングに強いシリンダー錠への交換や補助錠などによる本格的な防犯対策を呼び掛けている。